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みなさま、こんにちは。ファースト個別・岩田です。街の木々が葉を落とし、冷たい風が吹き始めると、ご家庭ではいよいよ中学受験「本番」の空気に包まれます。12月から1月。この時期になると、私の元には毎年必ず切実なご相談が寄せられます。
「先生、志望校を変えるべきでしょうか?」
過去問の点数が思うように伸びない。模試の偏差値が急に下がってしまった。子どものモチベーションが上がらない。周囲の「あの学校が良いらしい」という声に心がざわつく…
理由はご家庭によって様々ですが、不安の根っこは同じです。
「このまま突き進んで、本当に後悔しないだろうか」という我が子を思うからこその深い葛藤です。
結論から申し上げます。
この直前期における志望校の変更は、「正しいこともあれば、正しくないこともある」というのが真実です。大切なのは、「変えるか、変えないか」という二択の結論ではありません。「どんな基準でその決断を下すのか」という物差しを持つことです。
今日は、揺れる親心を整理し、後悔のない選択をするためのヒントをお話しします。
【1. 直前期の「迷い」は、本気の証】
まず、保護者の皆さまにお伝えしたいことがあります。
今、もしあなたが志望校について激しく悩み、心が揺れ動いているとしても、それは決して「準備不足」や「弱さ」のせいではありません。直前期のお子さまは、大人が想像する以上のプレッシャーと戦っています。連日の勉強、合格への渇望、そして疲労。6年生の心と体は限界まで張り詰めており、自信を失いやすい状態にあります。そして、それを一番近くで見守る保護者もまた、合否への重圧がピークに達しているはずです。
この時期、模試の結果や過去問の出来栄えが乱高下するのは、ある意味で「当たり前」の現象です。それを見て親御さんが不安になるのも、至極真っ当な反応です。むしろ、それだけ心が揺れるということは、これまで親子で「本気で受験に向き合ってきた証拠」でもあります。
どうか、迷う自分を責めないでください。
ただ、一つだけ注意が必要です。その「揺れ」や「一時的な感情」だけで、数年間積み上げてきた長期的な目標を安易に変えてしまわないこと。
ここからは、冷静な「親の目」を取り戻すための視点をお伝えします。
【2. 「数字の魔力」に惑わされないで】
直前期に陥りがちな最大の罠。それは、たった一度の失敗や、目の前の「点数」だけで判断してしまうことです。直前期の数字は「生き物」です。
特に過去問は、年度によって難易度や出題傾向が異なります。相性が悪ければ、合格点に届かないこともあります。直近の1年分が悪かったからといって、それだけですべての可能性が閉ざされるわけではありません。
偏差値も同様です。6年生の直前期、お子さまのメンタルは非常に繊細です。気持ちの持ちよう一つで、偏差値が5~10ポイント上下することも珍しくありません。
つまり、直前期の数字は、受験生活の中で「最も不安定な数字」なのです。それを唯一の羅針盤にして進路を変えるのは、霧の中で地図を見ずに舵を切るようなもので、非常に危険です。
では、どのような時に変更を検討すべきなのでしょうか。
【3. 志望校変更が「吉」と出るケース】
プロの視点から見て、志望校変更が合理的であり、お子さまにとってプラスになると判断できるケースは主に3つあります。
① 「壁」が明確で、時間切れが見える場合
過去問を複数年分解いてみて、合格ラインより平均して15~20点以上低い状態が続いている場合は、冷静な判断が必要です。
また、時間内にどうしても解ききれない、解説を読んでも理解が追いつかないといった状況は、残り1か月の「伸びしろ」の天井を示唆している可能性があります。この場合、志望校を調整し、確実に合格を狙える学校へシフトすることは、お子さまの自信を守る賢明な戦略と言えます。
② 本人の「熱」が冷めている場合
受験において、最後に奇跡を起こすのは「どうしてもこの学校に行きたい」という執念です。もしお子さま本人が「もう別の学校でもいいや」「疲れた」と本音で漏らし、その学校へのこだわりを失っているなら、それは事実上の「志望校喪失」です。
無理に元の目標に縛り付けるより、本人が今「ここなら行きたい」と思える学校を新たな第一志望に据える方が、心理的にも学力的にも良い結果を生みます。
③ 受験プランの「バランス」が崩れている場合
「第一志望への思いが強すぎて、安全校を一つも受けていない」「午後入試を詰め込みすぎて、体力的に持たない」…。
冷静に見直して、併願プラン全体に無理がある場合は、再設計が必要です。中学受験は一発勝負ではなく、数日間にわたる「総合戦」です。全滅を避け、どこかで必ず「合格」という成功体験を掴めるようプランを修正することは、逃げではなく立派な戦略です。
【4. 志望校変更が「凶」と出るケース】
逆に、以下のような理由での変更は、後で大きな後悔を残す可能性が高いため、おすすめできません。
① 「親の不安」だけが理由の場合
SNSで「○○ちゃんの家はもう過去問が終わったらしい」という情報を見たり、ママ友の話を聞いたりして、「うちは遅れているのではないか」と不安になる。
そして、その不安を解消するために志望校を下げようとする……。
これは「親の心の揺れ」であって、お子さまの実力とは無関係です。特に本人がまだ諦めていないのに、親の都合でハシゴを外すようなことは、絶対にしてはいけません。
② 「単発の失敗」で判断する場合
「昨日の過去問がボロボロだったから」「最後の模試でE判定だったから」。
先ほどもお伝えした通り、直前期の成績は乱高下します。たった一度の「不調」を「実力不足」と決めつけないでください。多くの受験生が、E判定からの逆転合格を果たしています。
③ 「合格率の数字」しか見ていない場合
模試の合格判定はあくまで統計上の確率です。当日の問題との相性、その日の体調、そして何より「火事場の馬鹿力」は計算に含まれていません。
「C判定だから無理」ではなく、「C判定だけど、この単元さえ補強すれば勝機はある」と考えるのが、直前期の親の役割です。
【5. 迷ったときの「3つのチェックリスト」】
もし、志望校を変えるべきか迷ったら、家族会議で以下の3点を問いかけてみてください。
<Check 1> 本人の「心」はどこにあるか?
これが最優先です。親の希望でも、塾の勧めでもなく、「本人がどこの制服を着たいと思っているか」。
最後に机にかじりつき、1点を削り出すのはお子さま自身です。本人の心が折れていなければ、親が先に白旗を上げてはいけません。
<Check 2> 当日までの「伸びしろ」はあるか?
点数が届いていなくても、その原因を分析してください。
ケアレスミスが多いだけなら、注意深く解く練習で改善できます。特定の苦手分野があるなら、そこを重点的に埋めれば一気に点数が伸びる可能性があります。
「今の点数」ではなく、「あと1か月で修正できるか」を見てあげてください。
<Check 3> 併願全体の「勝ち筋」は見えているか?
第一志望を変えなくても、併願校(滑り止め)を手厚くすることでリスクを管理できます。
「初日に必ず合格を取って勢いをつける」「午後入試で精神的な安全マットを確保する」。
第一志望を下げることだけがリスクヘッジではありません。全体としての「受験戦略」を見直しましょう。
【6.志望校変更よりも大切な、たった一つのこと】
志望校をどうするかという議論以上に、合否に直結する極めて重要な要素があります。それは、「ご家庭の空気を整えること」です。
直前期、親御さんの言葉一つ、表情一つがお子さまのメンタルを左右します。
「志望校を変えようか」という親の迷いが見えた瞬間、お子さまは「自分は信頼されていない」と感じ、不安に押しつぶされてしまいます。
逆に、親御さんがドシッと構え、「あなたなら大丈夫」「どこの学校に行っても、あなたの価値は変わらないよ」という「安心の空気」を作ってあげられれば、お子さまは恐れずに目の前の課題に集中できます。
この「安心感」こそが、本番での思わぬミスを防ぎ、本来の力を発揮させる最強の武器になります。
【7.志望校は「点数」ではなく「物語」で選ぶ】
志望校選びは、単なる偏差値のマッチングではありません。数年前、初めてその学校を訪れた時のことを思い出してみてください。
「この校舎で、楽しそうに笑う我が子が見たい」
「この環境なら、きっと大きく成長できるはずだ」
そこには、ご家族なりの「願い」や「物語」があったはずです。直前期に心が揺れた時こそ、その「原点」に立ち返ってください。なぜ、その学校を選んだのか?その問いへの答えの中にこそ、最も後悔のない決断が隠されています。
残り1か月。どうか、偏差値や世間の声といったノイズを少しだけ遠ざけ、お子さまの真っ直ぐな瞳と、ご家族の想いだけを見つめて、悔いのない時間を過ごしてください。
私たちファースト個別は、最後まで全力で皆さまと伴走します!